« キルギスと軍隊 | Main | 官僚化 »

May 16, 2005

諫早湾干拓裁判

諫早湾干拓についての工事差し止め判決に対する高裁判決が出ました。

住民に漁業被害と工事の関係の厳密な証明を要求した判決のようです。残り少しの工事は、漁業被害には、直接影響しないという農水省の主張は,農水省が漁業民の方を向いて仕事をしていないことがよくわかります。また,時のアセスの前に工事を完成させたいという姑息な意図も見えます。

それはそれとして,今回の件について,裁判所が出した、被害の原因と推定されるだけでは不十分で,被害の原因がこの事業であるということを証明せよという判決は,結論を導き出すためのこじつけにすぎないのでしょう。この種の問題において,被害原因の特定が常に科学的議論を呼ぶ問題であることを承知の上で,判決を出したとすれば,この判決は,この種の司法判断を要求することを禁止するという司法としてのメッセージでもあります。国と違って資金や手段を持たない集団に対して、因果関係の完全な証明を求めることは、司法のバランス感覚そのものが疑われます。この結論への道筋は、いろいろな行政訴訟で,都合よく便利に利用されそうです。差し止め請求を退けておいて、判決文に、文言を並べても、所詮言い訳に過ぎず,この問題に関して拘束力はありません。

このような事業において,事業者は,事業前に環境アセスメントによって,事業による環境への影響が最小限であることを立証しなければなりません。アセスメントの項目中には,漁業への影響も入っているはずです。したがって,事業後であっても,自ら実施したアセスメント内容の正当性を担保すためにも,漁業への事業による被害がないことを事業者責任で証明すべきではないでしょうか? ないという蓋然性では不十分です。

こんな結論の方が,常識的ではないかと思うのですが,司法判断は違うのですね。


ちなみに、この種の問題では、最高裁に持っていっても手続きの可否が問われるだけで、実質審議なしとのことなので、これで門前払い確実だそうです。

|

« キルギスと軍隊 | Main | 官僚化 »

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)




TrackBack

TrackBack URL for this entry:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/76764/4150105

Listed below are links to weblogs that reference 諫早湾干拓裁判:

» 続・人間の営みは反自然。だからこそ…… [◆木偶の妄言◆]
諫早湾干拓事業の工事差し止めの仮処分決定を福岡高裁が取り消した(記事)。島村宜伸農相はこの判決を受けて、工事再開の手続きに着手することを表明した。 なんと愚かな。 僕は佐賀地裁が仮処分を認めたことに対し「人間の営みは反自然。だからこそ…… 」という記事を書いた。「有明湾の漁業不振と干拓事業の因果関係を認め、事業規模から工事が進めば再検討が困難になる」と判断した佐賀地裁は、エコシステムの保全、自然の持続的な利用、という社会の流れに沿った、当然の判断を下したと思った。 今回の福岡高裁の... [Read More]

Tracked on May 16, 2005 at 07:45 PM

» 諫早湾干拓:差し止め取り消し [猫手企画@新聞屋]
Excite諫早湾排水門開放求め行政訴訟へ 諫早湾干拓、近く工事再開正直司法に落胆。これで九州での住民訴訟の道は閉ざされてしまいました。住民に行政並みの証明能力を求めるのは酷な話です。タイラギが不漁になった、水質が悪くなったなど状況証拠でしかないにせよ、その土地の人間が肌で感じた危機感以上の情報があるでしょうか。官僚社会の恐怖を全国の人が「ギロチン」に感じたじゃないですか。 この判決を受けて開門調査を行わないままの工事再開。無駄な公共投資の見直しが世の趨勢なのに、投資回収に50年も掛かる干拓事... [Read More]

Tracked on May 17, 2005 at 01:09 PM

« キルギスと軍隊 | Main | 官僚化 »